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「ロボットはな、無機物の塊なんだよ……人間みたいに血が通ってない。ただの作り物だ……感情なんてわざわざつけなくていいのに……」
そのとき、また大きな水の塊が目から落ちてきてコンクリートで出来た冷たい地べたを濡らした。
「虚しいんだよ……全部作り物って考えただけで……体のパーツひとつひとつも、頭の中にあるこの考えも……」
声は震えてきて、言葉はどんどん弱々しくなっていった。
「俺の全部がニセモノなんて……」
そのとき、左頬に鈍い痛みが走った。見ると、渚が右手を振り下げて俺を睨んでいた。
「それ以上はやめて……」
渚は消えそうな細い声で俺に囁いた。
「あなたが作り物だったら、私はどうなるの?……あなたと過ごした時間は? "好き"って気持ちは?……一体どうなるの?」
渚はそれらの答えを探るみたいに、じっと俺を見つめていた。だが、俺の視線は自然と渚から外れた。
答えられなかった。というか、分からなかった。ホンモノの定義、ニセモノの定義……そして、両者の違いが。
俺たちは互いに黙り込んだ。
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