3

10/10
前へ
/23ページ
次へ
「ロボットはな、無機物の塊なんだよ……人間みたいに血が通ってない。ただの作り物だ……感情なんてわざわざつけなくていいのに……」 そのとき、また大きな水の塊が目から落ちてきてコンクリートで出来た冷たい地べたを濡らした。 「虚しいんだよ……全部作り物って考えただけで……体のパーツひとつひとつも、頭の中にあるこの考えも……」 声は震えてきて、言葉はどんどん弱々しくなっていった。 「俺の全部がニセモノなんて……」 そのとき、左頬に鈍い痛みが走った。見ると、渚が右手を振り下げて俺を睨んでいた。 「それ以上はやめて……」 渚は消えそうな細い声で俺に囁いた。 「あなたが作り物だったら、私はどうなるの?……あなたと過ごした時間は? "好き"って気持ちは?……一体どうなるの?」 渚はそれらの答えを探るみたいに、じっと俺を見つめていた。だが、俺の視線は自然と渚から外れた。 答えられなかった。というか、分からなかった。ホンモノの定義、ニセモノの定義……そして、両者の違いが。 俺たちは互いに黙り込んだ。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加