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俺は大きく息を吸い込んだ。 「やっぱ言わない方がよかった。好きって」 思わず本音が出た。すると、渚はびっくりして顔を上げた。 「なんで……?」 また理由を聞かれた。今度は好きと言わなきゃよかったと考えた理由だ。渚の顔は涙でグシャグシャだった。目は赤く腫れていたし、息をする度に涙が溢れていて、錆びた蛇口みたいだ。俺はまた素早く整理した。 「渚が泣くから……泣くくらいなら言わない方がよかったって思っただけだよ」 そうして、枕の位置を少し動かしてさっきと違う箇所に頭を置いた。見上げると、何もない真っ白な天井が見えた。さっきから渚は何も言わない。だから、俺はいま感じたあれこれを天井の端から端まで並べて物思いに耽ろうとした。 「私、分かっちゃった……」 そのとき、渚が呟いた。 俺は首を少し傾けて渚を見た。 「なに?」 渚は俺の顔を見ると、途端に柔らかい表情を見せた。 「私も好きだわ、あなたのこと」 「え……?」 おどけていると、渚は少し鼻をすすった。
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