言葉を交わせない君に、ありがとう

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 メアリーは会うたび凍えていた。  凍えて僕を待つメアリーを、長いこと抱きしめてぬくもりを伝える。僕らの冬はそんなふうに距離がうんと近くなる時期だった。メアリーを肌で感じられる時期だった。  彼女を抱きしめていれば、僕は幸せで氷を溶かせるくらいに温かくなれた。 「君はどれだけの人に愛されてきたんだろう」  お別れの春までは僕も論文のことで大学に出向いてばかりになる。だからメアリーとは毎日のように会えるだろう。  メアリーは僕とお別れしても、また新たな出会いをする。そんなことはよくよく分かっていた。  授業にだって行かなきゃだものね。きっと誰かと一緒になるんだ。 「後にも先にも僕だけだなんてわがまま言わないから、今は僕だけだよ? ね?」  彼女を抱擁する。  今は、ぬくもりを分け合う特別な仲だからね。 「……」  メアリー、温かくなってきたね。  僕は物を言えなくなった、いや、元から言えてなかったが、とにかくシャイな彼女を、いっぱいの綿あめに顔を突っこんでたきしめる気分で抱擁した。  そして、僕はふと、夕焼けに染まる空を見て我に返るのだった。
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