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僕らの関係は、誰にも迷惑をかけていないものだ。
こう言うと開き直りだとされてもおかしくない。
ある人は、そもそも関係として成り立っていないとさえ言うかもしれない。
『おいおい、マネキンだろ』
そう本当に。マネキンだよ。
僕はそれを認識しているだけ、どこか冷めていて客観的ではあるかもしれないね。
自覚した狂い。
「マネキンでも、メアリーはメアリー」
僕がおよそ3年かけて愛情を注いだ大好きなメアリー。
「誰かに迷惑しているわけじゃないんだから放っておいてくれると助かるんだけど」
これは所詮僕の独り芝居だ。
何も、授業の教室だとか駅だとかの公衆の面前でやっているわけじゃないんだから。
僕はメアリーを抱いて独りアハハと笑い出す。
「メアリー、おかしいね」
そんな嗤う僕を、メアリーは黙って受け止めてくれる。「大丈夫」と慰めるように。
「僕は君がいなきゃ今頃、ずっと独り言をぶつぶつ言う怪しいやつになってたよ」
だって僕は独り言を言ってはいるけれど、決して独りじゃないんだからね。
君の前で、1人で喋っているだけなんだからね。
「メアリー、寂しいね」
でもね。僕は君が今後他の誰かのものになることを受け入れる。決して嫉妬しない。
君が愛されることが何よりの幸せだから。
実験準備室に埃をかぶるまで眠らされることの方がよほど胸が痛むよ。
見てごらんよ。使われていない器具たちを。一応布を掛けてはいるけれど、その布はうっすら灰色にくすんでいるじゃない。
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