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ペットボトルのスポーツ飲料を一口飲むと、わたし榎本百香は、スマートフォンの液晶に目を凝らし深呼吸を一つ。
授業で教わったことを頭の中で反芻する。
対戦型スマホアプリゲーム「魔導詠唱マジックボイス」が国際的なeスポーツとして認められ、スポーツ庁の管理下におかれることになり、マジックボイス専用のeスポーツ専門学校が広島県呉市に設立された。もとは遊園地だった呉ポートピアランドの敷地に学生寮付きの七階建て校舎が建てられる。
いわば、魔法の学校「ヒロシマソーサルスクール」だ。
四年後のオリンピックでメダルを獲得するべく、これまで引きこもっていたひとや、腕に自信のあるゲーマーが入学する中、スポーツ庁はこれまでにアプリで使われていたアイテムの「呪文」を大幅に削除したり、制限してきた。そうして没ネタとなったものはこう呼ばれる。
禁じられた呪文。禁呪だ。
スマートフォンのアプリソフトがeスポーツ化しオリンピックの正式競技になるなんて、あり得ないし、信じられない。誰もが感じるであろうことをわたしも感じた。専門学校に入学するまでは......
わたしが所属するクラスは、こうしたゲームが初めてという人が集まるクラスだが、いくらマジックボイスがスマホアプリ初のガラケーやガラホ対応だとしても、スマートフォンもアプリゲームも、対戦するのも初めてなわたしは、なかなか授業にはついていけなかった。
そんなわたしに呪文の使い方を教えてくれたのが、ロミという担任の先生だ。
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