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星無は石と自分のグロテスクな腕を交換した。バイオレットは嬉しそうに腕をボリボリ齧っている。
「さあ、石を手に入れたわ。どんな力であろうとも、いずれは時の流れに埋もれ光を失ってしまう。この石に終焉が訪れた。私はステーレス。終焉を見つめ導く女だから」
掌の上で光を失っていく石を見つめながら、四月一日は何とも言えない気分になっていた。
何この出鱈目な力。あのヴァスキがあっさりと無効化される力。
とりあえず四月一日は、黒色聖典に一つ情報を積み上げた。
星無は実際に殺しても死なない。
世界は元に戻っていた。東京湾沿岸に、四月一日達は立っていた。
「それで、これどうする?」
大鍋を押さえられて、一匹のシマダイになっていたマーキュリーバイオレットの姿があった。
「うん。可哀想だから返してあげましょう。基本的に無害な魔女だし」
シマダイは、嬉しそうに水面をパクパクしている。
「まあ、シマダイーーイシダイは岸壁を群れで泳いでるんだよな。誰か、サビキ持ってないか?」
「私のタックルケースのニャかにあるけど、釣るの?」
「うーん、何かなあ。こう、オチがな」
その時、誰もが忘れていた。先ほどの騒動で水没した水晶堂。そこに、何がいたのか。
そして、古生代を生き抜いた古き魔女は、水槽から抜け出したパプワンバスの一飲みで消えた。
「あ?」
「ぎゅー」
「ニャー」
「あらあら」
80センチのパプワンバスは悠々と海原目指して消えていった。
「良一いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!誰かロッドもってこい!良一釣りだああああああ!!」
新たに降って湧いたゲームフィッシュに沸き立ったのだった。
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