食事デート?いや、それはない

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星無がどんなに少女めいた行動を取っていたとしても、それはまやかしにすぎないのではないか。目の前でステーキを食っている可憐な少女の本当の姿は、巨大な口だけがある球状の物体にすぎないのではないか。 沙耶の唄的展開は本当かもしれない。 どさりと、ステーキが超山盛りになった皿が置かれた。バイオレットが立っていた。 「まあ、それにしても偉い世話になったなあ。四月一日、まさかウチの工房あっさり探し出すとは思わなんだわ。君、本物かもしれんね」 「バイオレット。今は何で?」 「ウチも陸に上がることにしたんよ。東京ベイサイドホテル知っとる?今はそこに住んどるんよ。なあスターレス。学校知っとる?」 そこで、始めて星無はバイオレットを見た。 「アリストテレスのグランマザーの学校ね。そうね。始君。君、学校行く気ある?」 「学校?魔法使い見習いが通う共同体だよな?日本にもあったんだな」 共同工房のある学校は、二つ名を持たない魔法使い見習いが通う場所で、そこで、師事する魔法使いに認められると、二つ名と工房が与えられるのだ。 まあ、別に通うのも悪い話ではない。 「ああそれからなあ。ウチあんたが気に入ったんよ。いつでも遊びにおいで。ウチの海底寝室見せたるわ」 露骨なお誘いがあった。でもなあ。ヴァスキだし。 ところで、星無は顔をそらしぷっくりと頬を膨らませていた。 少女めいた振る舞いを目の当たりにして、正直、可愛いと思ってしまった。 了
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