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その様子を見て、高田先輩はどう思うだろう? 耳まで真っ赤になりながら、愛梨は俯いてしまった。
微妙な空気も物ともせずに、高田先輩は部室に入ってきた。
「へぇ、よく出来てるね。美術部最後の部員がこれだけ力があるってのに、新入部員が入ってこないのが悔しいね」
「それは、勧誘の仕方も悪かったんだど思います……」
一年生が入ってきた時に、各部活のアピールタイムがあって、他の部活は盛大に盛り上げてアピールを習わしだ。そんな中愛梨は、美術部のどういうところが魅力的であるか上手く話せないままアピールタイムを追えてしまった。
その時の失敗が今に響いていると思っている。
「橘はさ、宣伝することに向いてないんだよ。だから、そんな重大な責務を一人だけに背負わせてしまった先輩達も悪いんだ」
高田先輩はいつも、失敗した人へのフォローが上手い。
愛梨はそんな高田先輩の姿に心惹かれたのだ。
「これさ、一枚貰っていい? 家に飾りたい」
示されたのは、笑顔で友達としゃべっている高田先輩の絵だった。
「え? いいんですか? 気持ち悪くないですか? 私がこんな絵を描いてて」
愛梨の心配を他所に高田先輩は絵に食い入る。
「俺って周りから見るとこんな風に映ってるんだなって、凹んだ時に励みになりそうだからさ」
そう言われると、断る理由もない。
「拙い作品で申し訳ないですが、よければどうぞお持ち帰りください」
「そう? じゃ遠慮なく」
そういうと高田先輩は、大事そうに包装紙に包むと、持ち帰る準備をし始めた。
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