新人と先生

6/10
前へ
/45ページ
次へ
食堂から色んなだしの匂いがしてきてお腹が減る。 うどんのだしの鰹節の匂いとかお味噌汁のいりこだしか、昆布だしの香り。私の食欲を香りで誘惑されているようだ。 「まずは、金券買って何が食べたいか決めて下のラインテープをみて並ぶんだよ。」 「私、家からおにぎり持ってきました。」 「じゃあ、僕のみてて次、食堂のランチ食べるときの参考にしてくれるといいよ。」 「分かりました。」 今日のランチは、三種類。麻婆豆腐に、チキンカツに煮物の筑前煮。どれも美味しそう。 「んー…どれも美味しそうだから悩むなぁ。あっ、三濱さんランチ何にします?」 「そうだね。…って、まさか俺の狙ってるんじゃないのかい?」 「分かりますか?(笑)僕は、麻婆豆腐にしますね。」 「…別の頼めと言ってるように聞こえるよ。仕方ない。チキンカツにしよう。」 大人の三濱さんは溜め息をつきながら後輩のお調子者の阪下さんに合わせた。こういうのができる三濱さんだから、リーダーになれるタイプなんだと理解した。 「あら?阪下君、可愛い後輩ちゃんと仲良くランチで羨ましいね。」 「西山さん。羨ましいですか?」 「私も紹介して欲しいな。ランチ選んで来るから一緒に食べていい?松川君も後で来るよ。」 柔らかい癒し系お姉さんタイプの西山さんは、とても可愛い人だった。話し方もふわふわ柔らかい感じで人懐こい誰からも愛されるようなタイプの人。 「西山さんは、商品開発部にいてブランルージュっていうブランドの商品を担当してるんだよ。」 「ブランルージュって、あの高級石鹸の匂いがするブランドですよね?私、ブランルージュのラブコフレ持ってます。いい匂いがするんですよ。」 「今、つけてる?」 「今はつけてませんよ。でも、口紅はアンジェのほのかに香るのをつけてます。」 「へえーっ、どうりで近くにいるといい匂いがすると思ったんだよね?アンジェは、もう直ぐ来る松川君が開発したんだよ。」 愛用のブランドの開発者二人に会えるなんて嬉しくて目がキラキラしている。それだけ、私は香りに敏感で匂いにはうるさい。 「阪下さんだって甘い柔軟剤の匂いしてましたよ。嫌な匂いじゃないです。」 「二人ともお喋りよりランチが冷めるから食べた方がいいよ。」 「「はーい。(笑)」」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加