第1章

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「ねーやばくない?こいつ絶対オタクだって」 「絶対中学のとき陰キャラだったよね」 「でも友達ちょっとカッコよくなかった?あの片山って人」 「そお?なんか老けてない?」 「でもあの人、超金持ちらしいじゃん」 「あー株だっけ?そんな儲かんのかなー」 「使い道ないから溜め込んでるだけじゃないのぉ?」 「言えてるー。服とか買わなさそうだし」 「でも、なんかわかる気がする。美咲があの人選んだの」 「絶対金でしょ」 「でも美咲の家ってお金持ちじゃなかった?」 「今はね。でも昔貧乏だったから、お金に対する執着がすごいのよあの子」 「なにそれ初耳ー」 「あんた、幼なじみだもんね。美咲の幼なじみとか苦労しそー」 「美咲って、天然ぶってるけどけっこうあざといとこあるしねー」 「あつしくんかわいそうだったなー。美咲に振られて超落ち込んでたし」 「あつしくんてだっけ?」 「美咲の元カレ。結婚話まで出てたのにあっさり乗り換えられちゃって」 「とか言ってじつは狙ってるんじゃないのぉ?」 「あ、バレた?」 きゃははは、と甲高い笑い声が響く。ここを知り合いが通ることは考えないのだろうか、頭の弱い奴らめ。 僕は向きを変え、肩を怒らせながら階下のトイレに向かった。 それにしても、あつしーー? 内容から察すると、僕の前に付き合っていた男だろう。聞いたことはないが…… いや、でも、僕は恋愛経験がないからわからないけれど、普通は秘密にしておくものなのかもしれない。 むしろ、その男より僕のことを選んでくれたのだ、喜ぶべきではないか。 そう思ってはみても、もやもやした気持ちは晴れなかった。 控え室に戻ると、和装に着替えた美咲が振り向いた。そして、はにかむように笑う。 「おかえりなさい。どう?変じゃないかな?」 「ああ……うん、すごく、いいと思う」 凛とした佇まいに見惚れる。さっきの女たちへの怒りなんて、一瞬にして吹き飛んでしまった。 純白のウエディングドレスを脱いだ美咲の色は、さっきよりも一層、白色に近づいていた。
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