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「ねーやばくない?こいつ絶対オタクだって」
「絶対中学のとき陰キャラだったよね」
「でも友達ちょっとカッコよくなかった?あの片山って人」
「そお?なんか老けてない?」
「でもあの人、超金持ちらしいじゃん」
「あー株だっけ?そんな儲かんのかなー」
「使い道ないから溜め込んでるだけじゃないのぉ?」
「言えてるー。服とか買わなさそうだし」
「でも、なんかわかる気がする。美咲があの人選んだの」
「絶対金でしょ」
「でも美咲の家ってお金持ちじゃなかった?」
「今はね。でも昔貧乏だったから、お金に対する執着がすごいのよあの子」
「なにそれ初耳ー」
「あんた、幼なじみだもんね。美咲の幼なじみとか苦労しそー」
「美咲って、天然ぶってるけどけっこうあざといとこあるしねー」
「あつしくんかわいそうだったなー。美咲に振られて超落ち込んでたし」
「あつしくんてだっけ?」
「美咲の元カレ。結婚話まで出てたのにあっさり乗り換えられちゃって」
「とか言ってじつは狙ってるんじゃないのぉ?」
「あ、バレた?」
きゃははは、と甲高い笑い声が響く。ここを知り合いが通ることは考えないのだろうか、頭の弱い奴らめ。
僕は向きを変え、肩を怒らせながら階下のトイレに向かった。
それにしても、あつしーー?
内容から察すると、僕の前に付き合っていた男だろう。聞いたことはないが……
いや、でも、僕は恋愛経験がないからわからないけれど、普通は秘密にしておくものなのかもしれない。
むしろ、その男より僕のことを選んでくれたのだ、喜ぶべきではないか。
そう思ってはみても、もやもやした気持ちは晴れなかった。
控え室に戻ると、和装に着替えた美咲が振り向いた。そして、はにかむように笑う。
「おかえりなさい。どう?変じゃないかな?」
「ああ……うん、すごく、いいと思う」
凛とした佇まいに見惚れる。さっきの女たちへの怒りなんて、一瞬にして吹き飛んでしまった。
純白のウエディングドレスを脱いだ美咲の色は、さっきよりも一層、白色に近づいていた。
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