第1章

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100人以上が集まった会場は、見たことがないほど色鮮やかだった。煌びやかな装飾、高価な花、料理、そして人々が放つ多様な色。 人はそれぞれ個別の色を持っている。その人を包むように、背景と同化して空気を色付けている。 わかりやすい言葉で言えば、オーラのようなものだ。なんだか胡散臭い占い師みたいなことを言っているが、それ以外に説明できる言葉を、僕は識らなかった。 目の前に座る30代前後の若者の席は、色鮮やかだ。赤、青、黄色、緑、みな信号機のようなくっくきりとした原色だ。 壁に近い親族席は水色や薄紫など、薄ぼんやりとした色が集まっている。 その隣の席の50代前後の女性は、絞りたての果汁のような濃厚な赤色だ。 これほどの色に、いや人に囲まれているのは、16年間ぶりだった。 目がチカチカする。普段滅多に人に会わない生活をしているせいで、大勢の人の群の中にいるのはひどく疲れる。 しかも今日は、自分が主役だ。親族や友人たちが、僕らのために、ここに集まっている。披露宴が始まったばかりだというのに、すでに体力を消耗しきっていた。 しかし、隣には美しい妻がいる。式が終われば2人で真っ直ぐ僕のマンションに向かい、夜はのんびり過ごす予定だった。 そう、この数時間さえ、乗り越えられれば…… 「今日の美咲、すっごいきれい!」 「ていうかいつもきれいだけど。今日は格別だよね」 「ほんと、美咲って色白だよね。ドレスが似合ってうらやましいー」 美咲の高校の友人だという女子4人組が、口々に褒め言葉を連発する。声がでかいなと内心では思いつつ、しかし自分の妻が褒められるのは、なかなかいい気分でもあった。 美咲の友人たちはみな、赤やピンクや黄色などの華やかな色を纏っている。 その中で、美咲だけが白色だった。 奇妙なのは、出会った頃の彼女の色が、違う色だったことだ。
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