第1章

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* 中学2年の夏、僕は学校に行くのをやめた。 中1から始まったイジメはさらに酷くなり、制服の下は青黒い痣だらけだった。汗っかきなのに、夏でも長袖を着ていた。両親は心配したが、長袖のほうが落ち着くからと意味不明な言い訳で誤魔化していた。 けれどそんな誤魔化しも、夏休みの終わりとともに、やめた。 たったひとりの親友、翔太という存在を、失ったからだ。 翔太は、イジメられていた僕に話しかけてくれた優しい奴だった。しかし、そのせいで翔太までイジメられるようになってしまった。 ごめんな、と僕が言うと、べつにこんなの平気だよ、と踏みつけられて泥まみれになった顔で翔太は笑った。友情の証だろーー その翔太が、夏休みの終わりの日、いなくなった。 人の色が視えはじめたのも、その頃からだった。どうして僕にだけそんなものが視えるのかは、わからなかった。どうでもよかった。何も考えたくなかった。 思考が停止すると、動くのも嫌になった。朝起きて制服を着るのも、家から出るのもーーそんな風にして、15年が過ぎた。
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