第1章

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* ネットにこんな奇跡的な出会いが転がっているとは、思いもしなかった。 株の情報収集のために登録していたSNSで、美咲と繋がった。 昔家が貧乏だったことから、生活の役に立ちたいと、お金のことを勉強し始めたのだそうだ。今でも収入の一部は家族に仕送りしているという。 きっと家族思いの優しい子なんだろう。 一度会ってみませんか、と提案してきたのは、美咲のほうからだった。 そんなの無理だ、と僕は思った。何年もまともに人と面と向かって会話していないのに…… しかし、会ってみたいのは、僕のほうも同じだった。 『じゃあ、一度だけ……』 実際の美咲に会ってみて、驚いた。 彼女は見たことがないほど色白で、まるで雑誌のモデルがそのまま抜け出してきたような美人だった。店にいた客が、ちらちらと美咲のほうを見ているのがわかった。 僕は緊張のあまり、ほとんど何も喋れなかった。尋常じゃないほど汗をかき、テーブルに滴り落ちてしまうほどだった。 そんな僕を前に、美咲は嫌な顔ひとつせず、楽しそうに話を続けてくれた。 お金の話は最初だけで、後は彼女の仕事の話や好きなことについて、話していたと思うーーそれも、はっきりとは覚えていないのだが。 出会ってから1年で、交際、結婚と、順調すぎて怖いほど速やかに事が運んだのは、ほとんど美咲のおかげだろう。 告白は美咲からで、プロポーズは僕からだった。そんな大勝負に出られたのも、美咲がそう仕向けてくれたからに他ならない。 今でも、結婚式の最中である今でも、信じられないのだ。 こんなに魅力的な女性が、僕の奥さんになってくれるなんて……。
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