第1章

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* お色直しのために一度退場し、控え室に戻ると、どっと疲れが出てきた。 ウエディングドレスの次は、和装に着替えるという。男は一度の着替えだけで楽だが、女性は大変そうだ。それなのに、美咲は僕とは違って緊張も疲れも見せず、終始楽しそうな表情を見せていた。 「ちょっと、御手洗いに行ってくるよ」 ひとりだけ疲弊しきっている自分が情けなくて、僕は席を立った。 「ええ、いってらっしゃい」 トイレに向かおうとすると、できればあまり出くわしたくはない連中の姿が見えた。美咲の友人たち4人組だ。顔を合わせるのは億劫だったが、トイレに行くためには、前を通らなければならない。 遠回りになるけれど、違う階のトイレに行こうか……そう思っていたときだった。 「それにしてもさあ、意外だよねえ」 壁の向こうから、女の嫌みたらしい笑い声が聞こえてくる。 「え?なにがー?」 「美咲の旦那だよ。びっくりするぐらい冴えないんだもん。マジで?って思っちゃった」 「あーわかる。なんかやばいぐらい汗かいてたし」 「アレと手繋ぐとか無理ー」 僕はチッ、と小さく舌打ちした。だから嫌なんだ、こういう低俗な奴らと関わるのは。 仲のいいふりをして、影では平気な顔で悪口を並べ立てる。それが美咲という美しい友人への、羨望や嫉妬からくるものなのは明らかだった。 4人がスマホで見ていたのは、さっき撮った写真だった。後で笑い者にするつもりだったのだと思うと、余計に腹立たしい。
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