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もう直ぐ葬儀屋が遺体の引き取りに来て、Nの体はあっという間に骨になるだろう。でも何も問題は無い。大切なあの美しい髪は彼女の家に置いてあるが、今後Nの美しさは骨から髪まで私の元で大切に保管されることになる。
私はあの純白の髪で何を編もうかずっと考えていた。
言い忘れていたが、私とNが出会う切っ掛けとなったコミュニティは色好きが集うものであった。その趣向は様々であるが、他人の趣向にはそれほど興味はない。私は白をこよなく愛している。Nの真っ白であろう骨も白く輝く髪も私の大切なコレクションになるであろう。
因みにNの愛した色は赤である。しかし実の所Nには白の方が良く似合うし、何より私は白が大好きだ。
今回のことは悲しい出来事ではあるが、見方を変えれば悲しみも癒える。何より私の大切で大好きなNの白を守ることが出来たことは大きいだろう。
Nの家に戻った私は切っておいたNの純白の髪を袋に入れてバックに仕舞った。そしてふと、オーブンを開ける。中は空である。熱もすっかり冷めていた。Nは一体何を焼こうとしていたのだろうとちょっとだけ考えたが、冷蔵庫にもそれらしいものは見当たらなかったので考えるのを止めた。
すると途端に私の頭の中は、手に入れたばかりの綺麗な白い糸のことでいっぱいになった。
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