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憂鬱な学校生活だったけど
不登校にはならなかった。
ただでさえ転校で遅れまくりの勉強。
落ちこぼれにだけはなりたくなかったからだ。
隣の席の転校生に
カノンは色々と積極的に教えてくれた。
おそらくカノンは学級委員か何かで
世話好きな女の子。
なんとなくそう感じていたら
実際そうだった。
カノン「今はここだよ。わからないことがあったら聞いてね?」
前にいた学校とは授業の進み方も
教科書すら違ってたから
正直、カノンの親切で色々と助けられた。
こんな可愛い子に笑顔で親切にされて
イヤな気になるはずがない。
カノンは休み時間にも
何かと僕に声を掛けて
みんなの輪の中に入れようとしてくれたけど
それだけは迷惑でしかなかった。
なかなか打ち解けられない転校生に
見られていることだろう。
けれどみんなと仲良くなるつもりなんて
これっぽっちもない。
そんな僕を冷たいと感じたのか
徐々にクラスメイトもどうしたらいいのか
わからないと困惑した空気になってきていた。
トモキ「おい!お前!!」
ヒロ「・・・・」
トモキ「お前だよ!!転校生!!」
ヒロ「なに?」
僕より少し背が低いくせに
声はやたらデカくて
無視しても勢いだけでやってくる。
どこに行ってもこういう奴はいる。
目立つ転校生が嫌いなヤツ。
確か・・・・満島トモキだっけ?
少人数のこのクラスの全員の名前は
3日目で覚えた。
覚える気なんかまったくなかったのに
こう少なくては僕がいくら抵抗しても
覚えてしまう。
トモキ「お前さ・・・・」
なんだよ?文句でもあんの?
放っておいてくれ。
僕だって目立ちたくない。
転校生だからって
物珍しい目で見ないでほしい。
トモキは怖い顔をしながら
僕の席ににどんどん近づいてくる。
生意気だとかそういうやつ?
ケンカしたいっていうなら相手してやるよ。
転校してからというもの
イライラして仕方なかった。
こんな町早く出たい。
そういう想いが何もかもを
イヤにさせていた。
カノン「トモキ!!やめなよ!!」
トモキ「うっせーな!!俺はコイツに用があるんだよ!!カノンは黙ってろ!!」
は?
トモキっていう奴が
カノンに向かって言った言葉に
僕はなぜだか無性に腹が立って
居てもたってもいられなくなった。
ガタッ
僕が椅子から立ち上がると
意外にもトモキは僕の身長よりも低いから
見下ろす形になった。
デカいのは態度だけだな。
トモキ「お前、でけぇな・・・・」
ヒロ「僕になにか用?」
トモキは引き下がるかと思ったのに
逆に身体を前に出してきて
僕は何をされるのだろうと身構えた。
だけどトモキから出た言葉は
その場にいた誰も想像しないものだった。
トモキ「お前かっこいいな!!俺と友達になってくれ!!」
・・・・・。
ヒロ「は?」
想像してたものと違いすぎて
一瞬頭が真っ白になった。
え?友達になれって言われた?
これまで、転校生と言えば
ハブられたりするのは当たり前で
そんな僕に女子が優しくするもんだから
男子は怒るのが定番だった。
それが・・・・
コイツ何言ってんの?
トモキ「お前みたいなカッコいい奴、この町にはいない!!俺、お前みたいなやつと友達になりたかったんだ!!」
クラスのジャイアン的存在かと思ったトモキは
実はカノンと一緒に
クラス委員も務めるしっかり者で
みんなから頼りにされる存在だった。
拍子抜けした僕だけど
カッコいいと言われて悪い気はしない。
トモキがこの時友達になろうって
言ってくれたことで
僕のこの街での生活が
思っていたものと変わったのは
紛れもない事実。
ヒロ「よろしく」
僕がそういうと
トモキは嬉しそうにくしゃっと笑って
手を差し出した。
その手をぎゅっと握って
僕たちは友達になった証に
握手を交わした。
。
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