STORY:1 転校生と田舎町

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それから数日もしないうちに 僕はクラスのみんなと話すようになった。 ここのみんなはズカズカと 僕のテリトリーに入ってきて 壁をぶち壊してしまった。 僕の方もトモキが友達になろうって 言ってくれたことで 心境の変化があったのは事実。 これまで何度も転校生ってやつを やってきたけど こんなこと初めてだった。 何回目かの転校から ずっと作られてきた壁は いつのまにかかなりぶ厚くなっていた。 仲良くなればなるほど 別れが辛いとわかってからは 最初から関わらないようにしてきた。 けど、この町ではそうもいかない。 いかせてくれない。 9名しかいないクラスメイトは やたら僕に構ってくる。 興味津々と言った様子で 目をキラキラと輝かせながら 僕を仲間に入れようとする。 僕の壁をいとも簡単に 取り去ってくれたみんな。 そのきっかけを作ってくれたトモキ。 僕がこうしてみんなの輪に入れたのは 紛れもなくトモキのお陰だ。 トモキは何をするにも僕を誘って 輪の中に入れてくれた。 クラスの中心的存在のトモキが言うから みんなも安心したんだろう。 トモキ「ヒロ!!校庭でサッカーやろうぜ!!」 ヒロ「うん!!」 トモキとはずっと前から知ってた 親友みたいに 一気に仲良くなった。 よそ者だったはずの僕に みんな優しく接してくれる。 嫌いになるはずだったこの町を 好きになるのに時間はかからなかった。 カノン「ヒロ!!いけーー!!」 トモキから来た絶妙なロングパスを受けると グラウンドの傍で応援していた カノンの声が聞こえた。 ぐっと足を踏み込んで 思いっきり蹴ると そのボールは勢いよく ゴールネットに突き刺さる。 トモキ「おおーー!!ヒロ、今のすげぇ!!」 ヒロ「トモキのパスが良かったんだよ!!」 カノン「すごーーい!!」 遠くにいるはずのカノンの声が ハッキリと聞こえて振り返ると こっちをみて手を上げて喜んでくれてた。 それをみた僕は人差し指で鼻を擦った。 うん。 悪くない。 ミツル「なあ、みんなクリスマスどうしてる?」 同じクラスのミツルが Xmasパーティをしようと誘ってくれた。 トモキ「いいな!!じゃあ、プレゼント交換しようぜ!!」 1人500円くらいで プレゼントを準備することになって 学校横にある文房具店に買いに行く。 デパートもなければ コンビニすらないこの町。 プレゼントを買うにはここしかない。 トモキ「あ」 トモキもミツルもシンも クラス中の奴がいた(笑) ミカ「ここしかないじゃんね(笑)」 ヒロ「はは(笑)そうなんだ!」 トモキ「ぜってープレゼントも被るよな!!」 ヒロ「ふーん」 トモキがそういうから 僕は母さんに頼んで マフラーを編んでもらった。 母さんは転勤続きで 友達や知り合いのいない中 暇つぶしに始めた編み物を マスターしてしまっていて いまやプロ並みの腕前だった。 真っ白な毛糸で温かそうなマフラーを あっという間に編んでくれた。 母「はい。ラッピング完了!!」 ヒロ「ありがとう」 母「もう友達が出来たのね。」 ヒロ「うん!みんないい奴なんだ!!」 母「そう。よかったわね。」 僕のことなのに嬉しそうに笑う母さん。 転校ばかりなのに弱音を吐けない僕だったけど ここにきてすぐの時 何気なく言った一言。 『もう学校行くのやめようかな』 冗談交じりに言ったその一言に 母さんは笑って「いいよ」って 笑ってくれたけど きっと凄く心配してたんだろうって思う。 。
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