STORY:1 転校生と田舎町

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階段を登って鳥居をくぐり 神社の境内へ入ると お社に続く道だけ雪がかき分けられている。 周りを覆う木々は厚い綿帽子を被っていた。 トモキ「こっちこいよ!」 雪のせいか人気のない神社は 異様な空気が漂っていて ちょっとだけ怖く感じた。 ここで初詣をするらしいが 今やっちゃっても一緒じゃないかって なんとなく思ってしまうのは 恐がっていると思われたくないから 内緒にしておこう。 トモキ「ヒロ!!こっちこっち!!」 僕に手招きをしながら裏手に回るとトモキは いつもそうしているかのように 迷わず建物の下に隠すように 置かれた箱を取り出した。 トモキ「これこれ。内緒だぞ?」 トモキが取り出したのはサッカーボール。 本当はここでボールは禁止されているけど みんなに見られない様に こっそりと練習しているんだと教えてくれた。 トモキ「俺の秘密の特訓場所なんだ」 トモキは時々一人でここに来ては リフティングやドリブルの練習を 暗くなるまでしているらしい。 トモキはサッカーが誰よりも上だった。 その理由が分かった気がする。 ヒロ「僕にも貸して!!」 トモキ「いいぜ!!パス!!」 トモキが蹴ったボールを 僕が左足で受けた。 トモキ「ヒロって左利きなのな」 ヒロ「うん。字を書くのもそうだよ。」 トモキ「やっぱお前はカッコいい!!」 左利きのどこがカッコいいんだろう? よくわかんない。 ヒロ「そう言ってくれるのトモキだけだよ(笑)」 トモキ「お前は俺の憧れだ!!ずっとそのままでいろよ?」 ヒロ「ん~、頑張る(笑)」 雪で服が汚れてしまうのもお構いなしに 何度もパスを繰り返しながら 色んな事を話した。 トモキとは誰よりも沢山の時間を 一緒に過ごした。 。
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