告知義務のない事故物件

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「で、でもよ、お前は仕方なかったんだよ、悪いのはその、エリアマネージャーってやつじゃないのか?」 わかっていながら無理難題を押し付けるパワハラ上司。 高原がこんなにやつれてしまったのも、度重なるパワハラと残業によるものが大きいだろう。 「……そうだよな、悪いのはエリアマネージャーだよな」 すんなり認めた高原は先程と同じ、不気味な表情を浮かべている。 ジワリと背中に汗が伝う。 「悪いやつだったからだろうなぁ、飛び降りて無理心中した母親と赤ん坊ってのがな……エリアマネージャーの嫁とそのガキだったんだよ」 何も言えず、固まる俺を見て高原は笑い出した。 「アハハハハ、産後鬱だとよハハハハハハハ!死んだよ、契約者でもないのになアハハハハハハハハハハハ……」 隣から聞こえてくる笑い声とは全く異なり、怒気を孕んだ笑い声は狂ったように繰り返される。 「……高原……」 「ああ、店長は俺に押し付けて逃げようとしたんだ、だから俺は、カッとなって302号室の契約書に店長の名前を書いて書類棚に隠した。傑作だろ?途端に何もかも恐ろしくなって、さっさと辞めて逃げ帰ってきたんだ」 高原は愉しそうに笑っている。 店中から聞こえる様々な話し声、笑い声と混じり合い、不協和音を織り成す。     
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