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まだ寝ている?まさか、逃げたのか?
焦った俺は直接マンションに向かった。
マンションに向かいながら、もしも中で藤宮が死んでいたらどうしようと気が気じゃなかった。
友人の遺体を発見するのはごめんだ。
どうかだらしなく眠っていてほしい。
ああごめんごめん、寝てたわと笑ってくれ。
俺と入れ違いで女が店に来ていてくれ。
遅くなりましたと契約を済ませるんだ。
どうか何も起こらないでほしい。
エレベーターのドアが開き、廊下が真っ直ぐ伸びている。
302号室は奥から二番目。
手前から三番目だ。
一歩、また一歩と部屋に近付いていく。
ついに302号室のドアが目の前に現れた。
他の部屋と何ら変わりはない。だが、今朝までのそれとは違うものに見えて来る。
302号室の文字がやたらと機械的で冷たい。
インターホンを鳴らす。
間延びしたベルの音の後の静寂。
俺はもう一度インターホンを鳴らした。
出てこない。
寝ている?居留守か?
あまり何度も鳴らせば周りから怪しまれるだろう。
意を決し、持ってきた合鍵で玄関ドアを開けた。
恐る恐る探して回ったが藤宮は部屋に居なかった。
携帯は充電コードがつながったままベッドの上に放置されていた。
荷物はそのまま残っている。
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