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「302号室はな、借りようとすると死ぬんだよ」
大真面目に何を言い出すのかと思えば。
俺は先輩にあしらわれたのだと思った。
説明がややこしいのか、それとも機密事項だったのか、とにかくしつこく問う俺が鬱陶しいから適当なことを言ったのだろう。
釈然としない俺の姿を見て、先輩は続けた。
「俺も詳しくは知らないんだが……建った頃から契約一歩手前まで行った客がみんな死ぬんだとよ」
「一歩手前、ですか」
「そう。内見して本決まり、申込みまで行って審査通す前にみんな死んだらしい。事故、病死、自死、個人的なトラブルに巻き込まれて他殺とかな」
「全員が?」
先輩はゆっくり頷いたあと、あくまで聞いた話だぞ、と付け加えた。
そんなことがあり得るのだろうか。
先輩の話によると、少なくとも5人以上は亡くなったらしい。
あまりにも死者が続いたため、お祓いをしたが効果はなかった。
土地の因果関係まで調べたが何もなかった上、他の部屋は全て順調に埋まっており、住人からは特に苦情も入っていない。
「……それで一旦うちの社員を住まわせて様子を見ることになったらしいんだ。怖いよな」
「えっ、社員に?大丈夫なんですか」
「お前、未だに302だけ募集かけてないの知ってるだろ?……大丈夫じゃなかったんだよ」
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