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恋愛詐欺師と恋愛小説家
「あなた、恋愛詐欺師ですね」
「何を藪から棒に」
「わたし、この後のストーリーが見えてしまったんです。
わたしはあなたに恋をしています。このままいけば、いずれわたしはあなたに全てを差し出してしまうでしょう。あなたはそれを受け取った途端、この上なくロマンチックに姿を消す。わたしはあなたを想い続け、訴えようなんて思いもしないまま、日々を過ごしていくんです。
それがあなたの手口」
「……さすが天才恋愛小説家。そこまで確信をもって言われると、ぐうの音も出ないな。
俺も一応仲間内では天才詐欺師で通ってたんだけどなあ。あなたが初めてだよ。俺に狙われていながら俺の正体に気付いたのは」
「わたしが書く恋愛小説は、皆ハッピーエンドで終わります。誘拐犯は誘拐した女を、恋愛詐欺師は騙した女を、好きにならなければエンドマークはつけられません。
……わからないんです。どうして自分を好きになってくれた人を騙すことが出来るんですか」
「んー。俺の場合、あまりにもみんなのことを好きで、こうなったのかもしれないな。
俺、地球上の人間みんな好きなの。博愛主義って言われると気に障るけど、多分そんなもの。会うやつ会うやつ、みんな好きになる。
でも、気付いたんだ。高2ぐらいだったかな。その好きっていうのが、『ケーキが好き』みたいなのと変わらないって。
俺がケーキを好きでも、どこかでそれが他の生ゴミと共に捨てられる姿を見たって、『ざんねん』ってぐらいにしか感じない。だから、俺にとって人間っていうのも、そんなものなんだろう、って」
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