恋愛詐欺師と恋愛小説家

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「…小説は、いつも予測不可能な状態から始まります。そうですよね?」 「そうだね」 「わたしは今、あなたを前に、絶望しています。でも、これが新たな小説の冒頭だという気持ちもあるんです。小説家ですから」 「なるほど。それで?」 「冒頭から先を諦めて終わってしまう小説なんてありません。最初からハッピーエンドを知っている主人公なんて居ません。だからわたしにも主人公になる権利はあります」 「………」 「わたしは、あなたが恋愛詐欺師だと気付きました。そしてあなたも、わたしが気付いたことを知りました。そのうえで、おつき合いしてほしいんです。  もしわたしがあなたを変えることが出来たなら、ずっとそばに居てください。わたしはそれを望みます。  本当に、あなたのことが大好きなんです」 「あなたをモノ扱いする男でも?」 「かまいません。今が始まりですから。  あなたのことを聞いたのは、これからあなたを変えていくにおいて必要な知識だったからです。それに気持ちを左右されることはありません」
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