俺に優しくしてくれるのはコイツだけ

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「それよりも……なに? またお説教?」 「あ、あのさ。まだ時間ってある?」 「え、時間? うーん、ちょっぴり」  だったら、まだ間に合うかもしれない。いや間に合わせてみせる。 「正直に言うと……俺、お前にプレゼントも何も用意していなかったんだ 「うん……」 「だから、その。今から一緒に買いに行かないか?」 「買いに行くったって、こんな時間じゃどこもあいてないよ? それに何を買うのさ?」「お前のクリスマスプレゼント」  隠してもしょうがないからストレートに言った。 「う、うん。分かった」  さっきは全然だったが、今のは伝わったらしく、彼女は顔を赤らめながら頷いた。  そう決まれば、急がないと。  一度脱いだコートを再び羽織り、俺は今一度寒さが染みる外へ出る。  買ってきたヨーグルト手際よく冷蔵庫へ入れると、彼女も外へ出てきた。 「さっき、チラっと見えたけど。ワイン買ったの? アタシも飲みたいからとっておいて」  腕を絡ませ、俺に寄り添う形で彼女はくっついてくる。 「分かったよ。それで何かリクエストはあるか?」  少し歩きにくいが、まぁいいか。 「うーん、そうだなぁ。サラダチキンとか?」 「こんなにも寒いのに、冷たいもの食って余計に冷えるぞ。ホットミルクとかはどうだ?」 「おっけ。じゃあ少し甘めで」 「了解。あとアレだ。お前が抜けたせいで、同僚? か誰かは知らないけど。その人にも迷惑が掛かってるからな。その人用にも差し入れを買うからな」 「えーそれ、何て言って渡せばいいのよ? 今の現場、アタシはカレシがいないで通してるんだから」  何て無意味なことをしてるんだコイツは。 「面倒くさいな、じゃあ適当にサンタからの差し入れとか言っとけ」 「クリスマスになるから?」 「そうだ、クリスマスだからだ」  そんなくだらない雑談を市ながら、俺は片腕から感じる確かなぬくもりに感謝しながら、適当な返事をする店員がいるコンビニへ急いだ。  頬に当たる風は冷たく、俺が1人でイブを過ごすことに変わりはないけれど。たとえ短い時間だけでも一緒に恋人といることができて、心も暖かくなった。
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