俺に優しくしてくれるのはコイツだけ

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 恋人たちがキャッキャッウフフな日を過ごす聖夜の前夜祭。  街を彩るイルミネーションの光が俺の目に刺さる。  スマホの待受画面は12月24日の午後22時を示している。  納期前で12月の頭から毎日、終電帰りを繰り返している俺からしたら、珍しく早く帰れるので心が躍る気持ちだ。 「今日ぐらいは、何か贅沢をしたいな」  前日、彼女に連絡するが、既に予定が入っていると断られてしまった。 「クリスマス・イブ♪」のスケジュール通知に表示されている音符マークに苛立ちを感じる。 「イカンイカン、冷静になるんだ」  こんなくだらない事で腹を立ててもしょうがない。空腹が俺の機嫌を損ねているんだ。  うん、そうに違いない。 ――チャララランーチャーンララララーダァーン♪  軽快な入店音と共に、暖房の風があたる。サイフの中身は常に冷たいが、コンビニの中は最高に温かい。  コートに突っ込んでいた冷えた手を出し、暖を取りつつ店内を見渡す。  他に客はいない。  性の六時間だというのにこんなところにいるのは、俺のようなボッチか店員ぐらいだろう。 「店員さん、いつもありがとう」  心の中で拝みつつ、今晩の獲物を物色し始めた。  約束された勝利の温かさを得られる王道のアチアチ缶コーヒー。  身体に悪いのは十分の理解しているが、どうせなら美味しいものを食べたい揚げ物。  程よい甘さが疲れを癒してくれる菓子パンとスナックのペアも選択肢としてはアリだ。  あえてキンキンに冷えたビールもいいが、アルコールを選択肢に入れるならワインもいいかもしれない。 「最近のコンビニはワインのレベルも高いから、なおさら迷ってしまう」  クリスマス時期になると専用のコーナーが設置されている。一番クジやお菓子コーナーを素通り、並べられているワインたちを見る。  フルボトルで五百円以下、最高かよ。  売れ残っているのは俺に飲まれるためだと思うと、愛おしく見えてくるから不思議だ。
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