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「お前、突然やってきて何てことをしやがる! そもそもお前、なんでここにいるんだよ。今日は夜勤だから、絶対に来れないって言ってたのに!」
マシンガンを発砲するように、言葉の弾丸を紡ぐ。
「お前が夜勤だって言うからさ、俺はイブだってのに、こんな時間まで残業して。やっと今日分のタスクが終わったから1人寂しく家に帰ってきて、晩酌でもしようかと大好きな唐揚げを買って、さぁ宴はここからだぜって時になんてことをしてくれたんだ!」
「あ、そ……そうなんだ。寂しいって思ってくれてたんだ」
どうやら俺の叫び全然届いていなかったようだ。
しあも寂しい、といキーワードだけ耳に入ったようだ。自分に都合のいいことだけ認識する女め。もうダメだ、我慢の限界だ。絶対にコイツとは別れてやる。
「ホイ」
俺が決意するのと同時に、彼女はビニル袋を手渡してきた。
「なに、コレ?」
「開けてみなよ」
中にはコンビニで買ったであろう、ヨーグルトが二つ入っていた。
「ちゃんとシフトを確認してなくてさ。よくよく見たら今日ってクリスマスイブじゃん?」
よく見なくても、普通はすぐに分かると思うが、と喉まで出かかったが最後まで話を聞こうと思う。
しかし、何故ヨーグルトなのだろう。
「ホントはケーキが定番なんだけど、食べ過ぎると眠くなるからさ」
さっき豪快に唐揚げを食した口で何を言っているのだろう。
「じ、自分のカレシがさ、イブに1人で過ごすのはどうかと思って……」
え、何。何の話?
「だから無理して、ちょっとだけ抜けさせてもらって、プレゼントを持ってきたの」
説明下手な彼女にここまで言われて、俺はやっと理解した。
要約すると、今日がイブなのを忘れてて、俺に悪いと思ったから仕事を抜けてプレゼントを持ってきたというわけだ。
「おまえさぁ、それよりも……」
ふと思った。モノやシチュエーションはどうあれ、コレは彼女からのプレゼントじゃないか。彼女も忙しいはずなのに、無理やり時間を作って俺に会いに来てくれた。
それなのに俺はどうだ?
彼女に会う方法も考えず、どうやって晩餐しようかとしか考えていなかった。
自分のことしか考えていない最低野郎じゃないか。
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