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※短編は本編を読んでから読むことをお勧めします。
ネタバレや、次の話へ関係ある内容のものもあります。
目の前にいる人物を別に嫌ってはいない。ただ、苦手なだけなのだ。
ウェイバーに紹介され、やって来た彼女はずっと話している。疲れることはないのかと、気になるが口を挟む隙すらない。
夜中にウェイバーから連絡が来て、今日彼女がやってくることを告げられたが、何を思って会わせようと思ったのかはわからなかった。だが、ずっと話し続ける彼女の言葉を聞いてなんとなく紹介した理由がわかった。
彼女は多くのことを知っているのだ。その中にはウェイバーが知っていても自分が知らないことや、自分が知っていてもウェイバーが知らないことなども含まれている。
それなのに彼女はそれを知っているのだ。夜中の連絡で彼女が情報屋だとは聞いていたが、まさかそんなことまで知っているとは思わなかった。
自分が知っていることは城にいる者の数人程度にしか教えていないことだ。それも、信頼できる人物にだけ。まさか城に一度も入ったこともない彼女が知っているとは思わなかった。
誰かが話したのかとも思ったが、そんなはずはない。誰もが彼女を見たら必ず自分に話すだろう見た目をしているのだから。
彼女はとても目立つ。それもそのはずだ。この国では見ることはないと言ってもいい見た目をしているのだから。
誰かが彼女を見たのなら、必ず耳に入ってくるだろう。彼女はクロイズ王国の人間なのだから。黒い髪だけではなく、黒い服を着ているのだ。耳に入らないわけがない。
マスクの下の顔が見えないからなのか、彼女は話し続ける。彼女が話すのは、最近クロイズ王国とヴェルリオ王国周辺で起きた出来事ばかりだ。
誰がいなくなった。誰が捕まった。彼処は危ない。など様々だ。
ただ、彼女の口からスカジの名前が出た時は驚いた。元々この国の人間ではないから、知っていてもおかしくはないのだが、少し警戒しているようだった。
だが、話す内容は警戒するようなものではなく、召喚するところを誰も見たことがないということ。
確かにスカジが何かを召喚するところを見たことはないし、召喚した何かを連れているところも見たことはない。それなのに、何故専属召喚士としてそばに置いているのかと疑問なのだろう。
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