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そんなこと一度も考えたことはなかった。彼女の言葉に俺が疑問を覚えてはいけないと思う。そう思ってはいけないのだ。何故スカジが専属召喚士なのか。
「そういえば」
彼女は突然何かを思い出したかのように、顎に手を当てて天井を見上げた。スカジの話は終わったようだ。
口元に笑みを浮かべて、俺をゆっくりと見る彼女は一体何を思い出したのか。正直言って、彼女の考えていることはわからない。会ったばかりだからというだけではなく、今後もわからないだろう。
「エリスに会ったわよ」
こいつは何を言い出すのか。そうとしか思えなかった。ウェイバーはきっとエリスのことを話してはいないだろう。彼女は情報屋なのだ。だから、知っているのだろう。
そうとは思うのだが、俺は公言してはいないのだ。エリスは妹だと。それなのに彼女は俺にエリスに会ったと言う。何故かはわからない。情報屋だから知っている。本当にそうなのか。
「貴方とエリスってそっくりなのよね。情報屋としては前から知っていた情報なんだけど。マスクで目元を隠しているといっても、そっくりなのよ。金髪青目、整った顔立。それに、前国王、前王妃を知っていればその子供も知っている人は多いんじゃないかしら?」
そんな彼女の言葉は聞いていなかった。何故なら嬉しかったからだ。そう、嬉しかったのだ。今まで生きていて一度も言われたことがなかったことを言われて嬉しかった。
俺とエリスがそっくりと。
正直この時彼女の話をしっかりと聞いていれば、マスクをつけて自分を偽り国王を演じていなくてもよかったのかもしれない。彼女が言うには、国民の多くは俺の正体を知っていることになる。それなら、若いからなめられるのではという心配などしなくてもよかったはずだ。他国の国王達の反応はどうかは知らない。俺が一番大事なのは国民。
だが、国民に顔を隠しているお陰でエリスと会う時は本当の自分をさらけ出せたのだ。国民が国王の顔を知らないと思っているから、少々情けない姿を見せても安心することができた。それなのに、本当は国民は俺の正体を知っていたのだという。
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