第一章 心から信頼できる者

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 アレースもアルトが持って来た手紙で知ったことだったが、あの2人なら大丈夫だろうとあまり心配はしなかった。そして、自分1人で納得してしまったためエリスに話すことを忘れてしまったのだ。 「旅行に行く前に会いたかったわ」  そう言って怒るエリスだが、怒りの矛先を向ける相手はここにはいない。アレースに文句を言っていたエリスだったが、白龍を見て黙ってしまった。楽しそうに歌う白龍に微笑んでから龍を見た。 「過ぎたことをいつまでも言っていたら駄目よね」 「……そうだな」  2人は同時に歌う白龍を見た。同じ歌を繰り返して歌う白龍は、とても楽しそうに両手を広げてその場で回っている。  あと何回歌うのかと思いながら、龍は空を見上げた。雲はあるが、雨は降りそうにない。すぐに『水龍』が雨を降らせるわけでもないのだから、当たり前かと思った。  その時。 「ん?」 「どうしたの?」 「……いや、なんでもない」 「……そう」  訝しむエリスだったが、何も言わずに白龍へと視線を戻した。問い詰められなかったことに、龍は有り難く思った。たとえ問い詰められたとしても、言っていいのかわからないというのもあったからだ。もしかすると、見間違いということもあるからだ。  だが龍は見たのだ。浮かぶ白い雲の隙間から、蛇のような体をした水色の生物を。あれが『水龍』なのだろう。きっと白龍の歌を聞いた。もしくは、今も聞いているのだろうと思い龍は微笑んだ。  『水龍』が白龍の歌を聞いたのなら、必ず雨が降るだろうと思ったからだ。これで、この村は雨が降る。そして、白龍も信頼してもらえるだろうと思ったのだ。たとえ、この間事件を起こしたのが『白龍』となったスカジであっても。中にはそれが原因で、『白龍』へと不信感を抱いている者もヴェルオウルには少なからずいたのだから。
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