第一章 心から信頼できる者

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*  村を出る時、村人は沢山の野菜を龍やエリスに渡した。報酬は城へ戻り、報告すれば貰えるため、龍はエリスの様子を窺った。受け取ってもいいのかわからなかったからだ。しかし、エリスは喜んで野菜を受け取っている。  それならと、龍は礼を言って笑顔で受け取った。歌い終わり、龍の横へ来た白龍には、村人は野菜ではなくお菓子の入った袋を渡した。野菜はまだ子供である白龍には重いからお菓子なのかと思うが、ただ村人が白龍にお菓子を渡したいだけなのかもしれない。  礼を言う白龍の頭を龍が撫でると、お菓子を貰って嬉しそうにしていた白龍がさらに嬉しそうに微笑んだ。  手を振る村人に、白龍は手を振りながら、エリス達は村を出る前に頭を下げて帰路へと着いた。振っていた左手を龍の右手と繋ぎ、見上げる白龍に微笑む。  村へと来る時は、徒歩だったが帰りも時間をかけて歩くのは疲れてしまう。そう考えて、村から離れると全員が立ち止まった。離れているため、村人からは姿が見えないだろう。龍はそう考えて立ち止まったのだが、まさかエリス達も同時に立ち止まるとは思っていなかったため驚いた。  どうやらエリス達も考えは龍と一緒だったようだ。立ち止まった彼女達は、何も言わずに龍へと振り返った。龍は言われずとも元々そうしようと考えていたのだが、エリス達は龍に頼もうと考えていたようだ。  手を繋いでいた白龍はエリス達を見上げてから、龍を見上げた。どうして全員が龍を見ているのかわからず、首を傾げている。白龍と繋いでいる手を離して、荷物をその場に置いて少し離れる。  置いた荷物を黒麒が持ち、白龍の左手をエリスが握る。もし白龍が龍へと近づいてしまうと危ないからだ。白龍は龍が何をするのかと首を傾げながら黙って見ている。  歩いていた龍が振り返り、充分な距離をとったことを確認すると、一度大きく息を吐いた。息を吐いたと同時に龍の姿が変化する。人型から獣型である『黒龍』の姿へと。  軽く伸びをしてからエリス達へと近づく。そばへと近づくと、その場で龍は伏せをして全員が乗りやすい体勢となった。 「問題なく『黒龍』になることはできるようになったのね」 「隠れて訓練してたお陰だね」
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