第一章 心から信頼できる者

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 楽しそうに言いながら龍の背中へと乗る白美。彼女の言うとおり、龍は訓練していたのだ。人型から獣型、その逆へとすぐに姿を変えられるようにと。何かあった時にすぐに姿を変えなくてはいけないということもあるのだから。  今ではスカジと戦った頃よりも早く姿を変えることができるようになった。姿を想像することなく、思った時に姿を変えられるのだ。  姿を変えた龍を見上げて、驚いている様子の白龍をエリスが抱き上げると、先に乗っていた白美が受け取る。すぐにエリスと黒麒が背中に乗ると、乗らずにいた悠鳥が羽ばたいて空へと飛んだ。それに続いて龍も大きな翼を羽ばたかせて地面を蹴った。周りの木々と同じ高さにいた悠鳥よりも高く飛ぶ。  一度の羽ばたきで、強風を起こしてしまうためだ。高く飛び上がると、悠鳥も高度を上げた。羽ばたいても迷惑がかからないであろう場所で止まると、ヴェルリオ王国へと向かう。 「たっかーい!」 「危ない危ない。乗り出すと危ない」  『黒龍』となった龍を初めて見て驚いていた白龍だったが、恐怖は感じていないようだった。白龍を抱え込むように座っていた白美が、龍の背中から見える周りの景色に喜び、立ち上がろうとするのを止めた。座っているため安全だが、立ち上がると自然に吹く風によって飛ばされてしまうかもしれないのだ。それだけではなく、龍もそれなりのスピードで飛んでいる。危険なことに変わりはない。  大人でも危険なのだから、まだ子供である白龍は立ち上がった瞬間に吹き飛ばされてしまうだろう。残念がる白龍には申し訳ないが、座っている場所から景色を楽しんでもらうしかない。 「白龍を連れてくる時は飛ばなかったのか?」  横に並んで飛ぶ悠鳥に龍が問いかけた。少し聞き取りにくかったのか、大きく羽ばたくと龍の頭上へと下りて座ってしまった。そこなら話し声もよく聞こえるので、龍は頭の上に座られたことを気にすることもなかった。 「『不死鳥』の姿となった妾の背中には乗せていたが、落ちると危険じゃから木々より少し高い場所を飛んでいただけじゃ。ここまでの高さでは飛んではおらぬ」
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