第一章 心から信頼できる者

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 白龍を連れてきたのは悠鳥だけだ。他にも誰かがいれば、白龍が落ちないように押さえてもらえる。しかし、1人だとそうはいかない。高い場所を飛んで強風で落ちるより、低い位置で飛んでいた方が強い風も吹かないため安全だ。まったく吹かないわけではないのだが、風を遮るものがある場所を飛んでいた方が安全ではある。 「生まれて間もなかったからなのか、とても大人しかったから飛ぶのも楽じゃった」  龍の背中に乗る白龍を振り返り見る悠鳥は、景色を見て楽しんでいる白龍に笑みを浮かべた。悠鳥にとっては楽しそうにしている白龍を見て、安心できるのだ。『黒龍』もだが、本来『白龍』は地上で人間達とは暮らさない。  正直、悠鳥にとっては不安だったのだ。今まで見てきた『白龍』は邪な心を持つ者に弱かったから。地上に下りれば、邪な心を持つ者と接触することも多くなる。それにより、体調を崩したり、元気が無くなるのではないかと思っていたのだ。  しかし、そんな心配はいらなかったようだ。たしかに、邪な心を持つ者が近くにいれば少し元気がなくなる。だが、必ず近くには龍やエリス達がいる。そのお陰なのか、白龍が体調を崩すことはなかった。  このまま、何事もなく白龍が元気に大人へと成長できればいい。悠鳥はそう願った。そう願うのは悠鳥だけではない、エリス達も同じだった。
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