第一章 心から信頼できる者

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 固まって動かないアレースと、攻撃するタイミングを伺っている人物の間に入ると右手に雷を纏わせて相手を睨みつけた。その雷を見て、アレースは正気に戻ったようで慌てて龍の両肩を強く二度叩いた。 「落ち着け、龍。そいつは敵じゃないから大丈夫だ。エードも誤解だから攻撃しないでくれ」  龍の背中に隠れながら言うアレースに、エードと呼ばれた人物は手をおろした。それを見て、龍も雷を消すと後ろにいたアレースが安心したのか小さく息を吐いた。  エードは落とした封筒を拾うと、黙ったままアレースの元へと向かいそれを手渡した。手渡された封筒が何なのかわからなかったアレースは、それを持って中身を見て気がついた。それはとても大切なものだったのだ。  それを持ってこいと言ったのはアレースであり、忘れていたとわかるとエードは軽くアレースの頭を叩いた。叩かれたことに怒らず謝るアレースに、エードは左手で前髪をかきあげ、少し上から見下ろすかのようにアレースを見た。何も言わないのは、よくあることだからなのだろう。  アレースを見下ろすエードの横に立っている龍は、髪の隙間から見えたものに目を見開いた。エリス達からは見えなかったようだが、エードは驚いている龍に気がついて微笑んだ。 「一応、皆様初めまして。私はエード・パカル・ワジマー。黒龍殿は驚かれたようですが、私はハーフエルフです」  龍が驚いたのは、エードの尖った耳を見たからだった。エルフは人間やドワーフが嫌いだと本で読んで知っていた龍は、何故ここにエルフがいるのかと驚いたのだ。  しかし、彼はエルフではなくハーフエルフ。それならば人間が多くいるこの国にいる理由に納得がいく。  ハーフエルフということは、彼の両親のどちらかが人間であり、エルフなのだろう。エルフ全員が人間嫌いというわけではないのだろうと、龍はエードを見て思った。 「エードは、俺の補佐をしてくれている。前は、スカジがしてくれていたんだけど、もう彼はいないしな」 「……なんか、申し訳ない」 「いいや、仕方のないことだから謝るな。それにエードは昔、前王の補佐をしていたからな」 「え!? エードさんって何歳なの?」  静かに椅子に座って楽しそうに様子を見ていた白美が背もたれに身を乗り出してエードに尋ねた。どう見てもエードは10代後半にしか見えない姿をしている。前王の補佐をしていたのなら、10年近く前の話になる。
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