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それでもよかった。群れの皆は、初めて私を見た時は驚いていたが、赤髪であることも、オッドアイであることも気にしてはいなかった。もしかすると、災いをもたらすという話はハイイロオオカミだけに伝わっているのかもしれない。過去に何かがあったのかもしれないが、それを知っている者はこの群れにはいないのだろう。私もハイイロオオカミに過去、何があったのかは知らない。聞くことはなかったが、知っている者はいないといえた。誰も私を嫌がらずにいたから、そう思っただけだったが。動けないというわけではないのだ。嫌ならば群れから抜けていただろう。たとえ、1人で生きていかなくてはいけないとしても。1人になったら長くはないとしても。
私の成す群れは、3年間何事もなく平和に過ごしていた。病気であった者や、年老いた数人は亡くなってしまったけれど、縄張りとしていた森で楽しく生活していた。捨てられた幼い子供も狩りを手伝ってくれるようになった。
怪我をした者が小さな獲物を捕らえる時に、子供達を連れて行っていたのだ。そのお陰で、狩りの知識を得た子供達は、私の手伝いができるようになった。大きな獲物は無理でも、邪魔にならずに手伝ってくれるようになったのだ。
そんな群れでの生活がとても楽しく、そしてとても幸せだった。
あの日までは。
1人で狩りに行き、戻ってきたらそこには私の知る者達の多くはいなかった。いや、いたのかもしれない。しかし、私の目には血の海や肉の塊ばかりが映っていた。落ちているものなどで、それらが群れの者たちであるとわかる。
私は引きずっていた大きな獲物から手を離し、近くにいる男達を睨みつけた。笑みを浮かべている男達の腕の中には子供達や、数人の女性がいた。怪我をしており狩りができない者だ。そして、数匹の狼が鎖に繋がれていた。
「手を離せ!!」
男達に言うが、腕を離す者は1人もいない。1人の男が、手に持っていた何かを私の足元へと投げた。それは、頭だった。目が見開かれ、何も言わずに私を見つめていた。その人は、群れで一番年老いた男性だった。
もしかすると、彼は私が災いをもたらすと知っていたのではないかと、その目を見て思ってしまった。腰に携えていたナイフを右手で握り、頭を投げた男へ向かって走った。彼と同じ目に遭わせてやろうと思ったのだ。
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