鏡の中の私が微笑む時

8/8
前へ
/107ページ
次へ
 昨夜、散々快楽を教え込まれた身体は、いとも容易く開いていく。  身体の隅々まですべてを透さんに差し出せば、心までが解放されたように感じた。 「綺麗だよ」  欲情した瞳の透さんに言われると、自分が一輪の花になった気がした。華やかではないけれど、透さんのためだけに咲いた深紅の花。  透さんを誘うみたいに私の中から蜜が溢れ出し、それを指でかき混ぜながら彼は苦しそうな声を漏らした。  父が言うように、男はミツバチなのかもしれない。  でも、透さんはもう私以外の花の蜜を吸おうとは思わないだろう。  何の根拠もないけれど、私は彼を信じられる。  暑そうに掛け布団を撥ね上げた透さんの額には汗が滲んでいた。 「梨花、愛してる」 「私も。……愛してる」  その言葉を待っていたかのように、透さんは一気に私を貫いた。  最初は大きくゆっくりした律動が徐々に気持ちを高めていく。  じれったくなってきた時、不意に快感がやってきた。 「あっ! あ、あ、あ、あ!」  私の口からあられもない声が漏れだすと、もう抑えることは出来なくなった。  透さんが律動を速め、いやらしい水音が狭い部屋に響いて恥ずかしくなるけれど、もっともっとと求めてしまう。 「聞こえる? すごいよ。梨花が感じてる音だね」  そんな言葉で、また蜜が溢れ出すのを感じた。 「もう……どうにかなりそう」 「俺も、もう。……行くよ!」  激しく突き上げられて、私も絶頂に導かれた。    蜜口が拍動する奥で、透さんのモノが脈打つのを感じる。 「愛してるよ。もう一生離さない」  覆いかぶさってきた透さんが唇を合わせてから、ピタリと身体を重ねてきた。汗でしっとりと濡れているのは私も同じだ。  熱も呼吸も心拍も。すべてがシンクロして、幸せだと思った。  私は透さんの愛を百パーセント感じ取れたのだろうか。  きっと彼に訊けば、「まだまだだよ」と優しく笑うだろう。  まだ半分もわかっていないとしても、あなたにこんなに愛してもらえる自分を私も愛しく思う。  私自身をもっと大切にしたいと思った。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4871人が本棚に入れています
本棚に追加