綺麗に染めてあげるわ

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 俺はSM倶楽部など初めてなので、肝心の内容は全く分からない。 「それならお任せでお願いします。因みに料金設定はどのように?」 「基本は一時間三万円で、あとは時間の長さやプレイ内容で変わってきます。三咲さんからは、一時間コースでと言われていますが」  一時間三万円が高いのか安いのかは分からないが、金額的な問題はない。  「分かりました。私は五十嵐と申します。三咲さんによろしくお伝えください」  俺は了承して、名前を告げた。 「承りました。それでは失礼いたします」  電話を切った俺は、はああっと長いため息をつき、リビングのソファーの背もたれに身体を預ける。  それにしても、SM倶楽部だったとは。俺の想像をはるかに越えていた。だが、何故か断る選択肢なんて端からなかった。別に今までSMのプレイに興味なんてものもなかったし、予約した今でも全くない。ただ、あの女にもう一度会いたい一心だけだ。妙に引っかかる。女のあの言葉のせいだろうか。 「いっぱい染められたのね」 この言葉がやけに俺の頭を埋めている。そして、「わたしなら、あなたをもっと綺麗に染めてあげられるわ」 この真意は? まるで蜘蛛の糸に絡めとられてるような感覚が俺を襲う。今ならまだ引き返せる。そうは思うが、本能と呼んでいいか分からないものが、あの女を求めているのを感じる。まあ、分からないなら飛び込むまでだ。別に命を取られる訳じゃないし。  いくら考えても堂々巡りするだけだ。少し早いが今夜はもう寝よう。どうせ明日には何かしらの答えが見れるはずだ。それが良いにしろ、悪いにしろ……。
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