20人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はSM倶楽部など初めてなので、肝心の内容は全く分からない。
「それならお任せでお願いします。因みに料金設定はどのように?」
「基本は一時間三万円で、あとは時間の長さやプレイ内容で変わってきます。三咲さんからは、一時間コースでと言われていますが」
一時間三万円が高いのか安いのかは分からないが、金額的な問題はない。
「分かりました。私は五十嵐と申します。三咲さんによろしくお伝えください」
俺は了承して、名前を告げた。
「承りました。それでは失礼いたします」
電話を切った俺は、はああっと長いため息をつき、リビングのソファーの背もたれに身体を預ける。
それにしても、SM倶楽部だったとは。俺の想像をはるかに越えていた。だが、何故か断る選択肢なんて端からなかった。別に今までSMのプレイに興味なんてものもなかったし、予約した今でも全くない。ただ、あの女にもう一度会いたい一心だけだ。妙に引っかかる。女のあの言葉のせいだろうか。
「いっぱい染められたのね」
この言葉がやけに俺の頭を埋めている。そして、「わたしなら、あなたをもっと綺麗に染めてあげられるわ」
この真意は? まるで蜘蛛の糸に絡めとられてるような感覚が俺を襲う。今ならまだ引き返せる。そうは思うが、本能と呼んでいいか分からないものが、あの女を求めているのを感じる。まあ、分からないなら飛び込むまでだ。別に命を取られる訳じゃないし。
いくら考えても堂々巡りするだけだ。少し早いが今夜はもう寝よう。どうせ明日には何かしらの答えが見れるはずだ。それが良いにしろ、悪いにしろ……。
最初のコメントを投稿しよう!