待ち

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 私は雨が好きだった。  理由は大好きなあの人が帰って来るから。  あの人が帰って来るのは決まって雨。  いつもびしょぬれで家に帰ってきて、それを私が拭く。  だからいつしか雨の日が楽しみになっていた。  ――そんなある日の事。  いつもの様にあの人は雨の日に帰って来る。  私に拭かれあの人は言う。 「今日は特別な日になりそうだ」  あの人はそう言ってすぐ寝る支度をした。  ご飯は? と、聞くとあの人は、 「今日はいい」  と、言って部屋に入った。  私があの人と話したのは今日が最後だった。
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