フリマアプリ

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フリマアプリ

 金がない。働けど働けど、出て行くばかりで手元には金がない。  そうぼやいていたら、羽振りのいい友達がとるあフリマアプリを紹介してくれた。  でも、俺の持ってる物なんて二束三文のガラクタばかりで、出品の手間を考えたらむしろ損をするくらいだ。  その訴えに友達は、自分も実行しているという裏技のことを教えてくれた。  なんでも、とあるサイトのアプリをインストールすると、持ってるスマホ本来のアドレスや電話番号とはまったく別の、新規のアドレスなどを同じスマホで取得できるらしい。  その架空アドレスを使って別人としてフリマサイトに登録し、拾い物の画像でいいから見て『人形』と判る写真を出品欄に掲載する。つける値段は一万円。その際商品名を、でっちあげでいいからどこにでもありそうな人名にしておくと、そこに購入申し込みが来るというのだ。  もちろん出品されているのは手元にない品だから、希望があっても売ることはできない。  だけどそのことは隠し、購入希望者に連絡を返すと、向こうは出品した『商品』の状態などを事細かく聞いてくる。その際、手元に存在しない人形の状態ではなく、自分の今の健康状態を返信すると、数日後に購入希望は取り下げられるが、時間を取らせた手間賃として数万円分のポイントがアプリサイトに加算されるのだという。  ちなみにその時得たポイントは普通に使えるため、色々欲しい物を手に入れられるし、何ならその品を売り払って換金することも可能だそうだ。  この話が本当なら金なんて稼ぎ放題だ。  色めく俺に、友達はふいに険しい顔を見せ、絶対にしていけないという二つのことを語った。  一つは、本来のアドレスや電話番号、そして本名を決して表に出さないこと。  もう一つは、月に二度までしかこの方法の『出品』をしてはいけないということ。  友達自身も他の知り合いから聞いたことなので、理由は判らないようだったが、何しろやっていることがそもそも怪しいので、色々と制約があるのだろうということは理解できた。
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