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暖かい太陽の光が、草木や湖に反射してキラキラと光る。
先日まで雨が降っていたこともあり、道にはところどころ水溜まりができている。
この国、エイリスでは、久しぶりの晴れた日だった。
集落から少し離れた所に佇む小さな家の窓から、ひょっこりと少女が顔を出し、空を見上げる。
背中まである茶の真っすぐな髪がユラユラと風に揺らいで美しい。
彼女の名前はリオン。
一七歳の、一見どこにでも居る少女だ。
ただ一つ、違うことと言えば――。
「ねぇお母さん。今日は村の方に出てみない? もうすぐ村でお祭りがあるから、皆楽しそう!」
窓から出していた顔を引っ込めて母親の方に振り返る彼女は、まだ微かに幼さが残っている。
そんな彼女を微笑ましく思うも、母親は重い口を開けた。
「ダメだよ。私が村に出て行けば、皆混乱してしまう」
母親は短い黒の髪をかき上げた。
そう、この国、この世界は、黒の髪と瞳を持つ者は『黒の妖精』と呼ばれ、滅亡の原因だとされている。
遠い昔の話が現代まで伝わり、それは迷信でもないようだ。
つい先日に他の国が、黒の妖精が原因で破滅したと情報が入ってきた。
そのせいで今、村の方では一層と黒の妖精に対する厳戒体制がひかれているのだ。
「大丈夫だよ! ほら、髪を隠すためのローブだってあるんだし!」
リオンは壁に掛った白のローブを指差した。
もう何年も着ていないせいで少し埃が被っている。
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