第6章

3/8
前へ
/40ページ
次へ
ぶつかった所は運悪く食事を置いていた机で、リオンはまだ温かいスープを頭から被る羽目になっていた。 それだけならまだしも、床は散らばった食器の破片だらけだ。 リオンの腕から血が滴り落ちる。 「いたた……」 彼女は腕を押さえると同時に、ユイランによってまた胸ぐらを掴まれた。 「お前……さっきの言葉もう一回言ってみろよ。誰が想われてるって? 誰が! 誰に!」 リオンは恐ろしさで目を瞑った。 今度は殴られるかもしれない。 体が小刻みに震え出す。 しかしいくら身構えていても、彼から声は聞こえない。 不思議に思ったリオンはゆっくりと目を開けた。 「……笑わせんなよ」 乱暴ではあったが彼女の胸ぐらは解放された。 リオンは怪我をしていない方の手で、慌てて衣服を整える。 「あいつが俺を想ってるって言うなら、どうしてあの時……っ」 「え……?」 ユイランはハッとして口を閉じた。 「何? ユーフェンと何かあったんですか?」 「何でもねぇよ」 ユイランが彼女を振り払った瞬間、彼女は彼の首筋に何かを見つけた。 赤黒い三角の痣のようなものを。 「首、どうしたの……?」 「……っ!」 「怪我、してるの?」 「何でもねぇって言ってんだろ!」 彼はリオンの片方の肩をぐっと掴むと、壁に押し付けた。 ギリギリと痛みが全身に広がる。 「うぜぇんだよ、お前」 今度はもう片方の手で彼女の髪を掴みあげる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加