第6章

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「腕……大丈夫?」 優しく触れるユーフェンの手から伝わる、温かさ。 リオンは彼の手を握ると微笑んだ。 「うん、全然平気だよ」 二人の間の雰囲気が少しずつ変わっていくのを、彼女は感じていた。 ユーフェンの顔を見るとほっとして、会話をすると全身が熱くなる。 (好きなんだ) リオンはユーフェンの瞳を見つめた。 透き通ったブルーの瞳に呑み込こまれてしまうような錯覚に陥った。 段々と顔の距離が近付く。 彼の前髪が、リオンの額に当たる。 リオンは内心焦りを感じつつも目を瞑った。 ドキドキする心臓が何とも心地よい。 少しでも動いたら、本当にキスをしてしまうくらいの距離。 「おい」 何とタイミングが悪いのだろうか、ユイランの部屋の扉の前に、不機嫌さを増した部屋の主が立っていた。 「……あ、わっ! えーと……」 慌てて離れるリオンとユーフェン。 彼女は耳まで真っ赤にし、ユーフェンは顔を隠すように口元を手で覆った。 ユイランは眉間に皺を寄せると、二人を睨む。 「人の部屋の前で煩わしい。失せろよ」 確かに、ユイランの言うことは最もだと思った。 しゅん、と肩を落とす彼女の横で、ユーフェンはユイランを見、口を開けた。 「ユイラン、何で廊下に出てるんだ?」 リオンははっとした。 そう言えばライトに付いて行くことに必死で、鍵を閉め忘れていたのだ。 「あ……っ、ごめんなさい、私が鍵閉め忘れて……」 「早く部屋に戻れよ」 彼女の言葉をユーフェンは遮る。 そして、ユイランに放った言葉は何とも強いものだった。
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