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「……フン、黒の妖精は自分の家も自由に歩けないってか」
暫く三人の間に沈黙が流れた。
誰も出方が分からずに、その場に佇む。
――と、その時。
ガシャーンッ!
城内に響き渡るすさまじい音。
(何……!?)
この音は、先程リオンが歩いてきた方向からだった。
あまりの音の大きさに呆然とするリオン。
けれど。
「……母上……っ」
小さく呟いたその言葉を、聞き逃しはしなかった。
「ユイラン!?」
彼は音がした方に向かって走り出していた。
ユーフェンはすぐに状況を理解すると、リオンの背中を押した。
「ユイランの後を追って! 僕は後から行くから!」
「わ、わかった!」
リオンは今、何が起こっているのかわからなかった。
ただ理解したのは、『母上』と呟いたユイランの声が、少し震えていたこと。
そして、今向かっているのはユイランの母君、王妃の元ということだった。
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