ミルクパズルに溺れて

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 パズルピースが一つ、二つ。  彼女の指先で気ままに踊っている。  夕暮れ時の教室でただ一人、自分の席に座る彼女は、橙色を浴びて少しだけ眩しそうにしていた。今日も純白のパズルピースを見つめながら、乾いた笑みを浮かべて何かを考えているように見える。 「……今日もそれやってんのか?」  独りぼっちで教室に残っている彼女がなんとなく寂しそうに見えて、俺は声をかけた。こうして声をかけるのは、もう何度目だろう。別に彼女と仲がいいわけでもないし、興味があるわけでもない。ただ、何も声をかけずに帰るのは少しだけ気が引けた。 「うん。暇だからね」  俺に気づいた彼女――須藤絢菜(すとうあやな)が、輝きの消えた目で笑った。頬に貼られた湿布や、両手のあちこちを隠す絆創膏が痛々しい。それでも彼女は、何事もなかったみたいに不器用に笑う。  須藤は、俗にいういじめられっ子だ。彼女が誰かを虐げただとか、何か許されざる行為をしただとか、そんなことは一切ない。人より少し物事をはっきり言う性格のせいで、クラスメイトの反感を買ってしまっただけだった。 「その白いやつ、いつも思ってたけど何なんだ?」 「ただのパズルだよ。知らない?これ、ミルクパズルって言うんだけど」  須藤は真っ白なピースを人差し指と親指でつまみながら微笑した。
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