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ジングルベルをあなたと聞きたい
あの人はおれの世界を変えてくれた人だから、それだけでもう充分なのに多くを求めすぎてしまう自分の子供っぽさに嫌気がさす。
クリスマスを一緒に過ごしたい。そう言いたいだけなのに上手くできないのだ。
航平さんは忙しい。多分年末に向けて忙しくなるだろうと10月には言われている。
だから、どこかに行きたいとか、何か特別なことをしたいとかじゃなくて24日に、ただ、彼の顔を見られれば充分なのだ。
付き合いだしてから少し経つのに、その日家にいてもいいですかとも言えないなんて進歩がないと思う。
合鍵はもらっていてたまに週末等は彼の予定に関わらず彼の家で待っていることはある。同じ様にクリスマスも勝手に行って待っていればそれだけで充分だ。
それよりも、クリスマスなんて気にしない様になれればどんなにいいかと思う。
「素敵なツリーよね。」
ゲイバーのママの葛城さんがショッピングモールのホールに飾られたクリスマスツリーを見上げて言う。
今日は買い物の荷物持ちをしている。航平はホント捕まらないと怒っていたので相当忙しいのだろう。
「そうですね。」
「まるでデートみたいだよね。」
冗談交じりに笑顔を浮かべ言われた言葉に思わず声を出して笑う。
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