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もしかしてが脳裏をよぎる。別れ話なのかもしれないと思った。
車の中ではお互い無言で、相変わらず航平さんは不機嫌なままだった。
連れてこられたのは航平さんのマンションで、そのまま二人で彼の部屋に向かう。
玄関を入ったところで、腕を引かれる。
もつれるみたいにして靴を脱いで、それから半ば引きずられる様にしてリビングへと連れてこられた。
輸入物なのだろう、彼の部屋には大きなソファーが置いてある。
そこに航平さんが座ると彼の太ももの上に座らせられるように腕を引かれた。
「今日葛城と出かけたんだって?」
「ああ、はい。お店のクリスマス用の買い出しの手伝いで。」
おれがクリスマスと言った瞬間、航平さんの体がギクリと固まるのが分かる。
「年甲斐も無く恥ずかしい嫉妬だというのは分かっているんだ。」
後ろから抱きしめられ、小さな声で航平さんは言う。
「あいつが、デートしたって煽っているのは分かっているし、クリスマスだからって特別なことをしてやれそうにないのも分かってる。」
おれの肩に顔を押し付けるみたいにして航平さんは言った。
「嫉妬してくれたんですか?」
「……まあ、恥ずかしながら。」
「嬉しいです。クリスマスも別に特別なことは何もいらないです。」
一旦立ち上がって、航平さんと向き合う。
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