もう一度火をつけて

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「それなら、まだ、俺の事好き?」  ずるい。ずるい言い方。私が逆らう事できないのを知って、人の逃げ道を塞いで本音を引きずり出そうとする。耳を撫でていた指は私の輪郭をなぞり、あごに触れて指をかけて、ゆっくりと上向きに引き上げていく。目をそらすことはできない。 「……好き」  観念した私がぽつりとつぶやくと彼は笑みを浮かべて……もう一度唇を塞ぐ。今度は深く、呼吸を奪うみたいに。私が彼の背中に腕を回すと体の隙間がなくなるくらい強く抱きしめてくれる。  ここが会社なんてこと忘れそうになるくらい、何度もキスを繰り返す。離れていた時間を埋めるみたいに。 「……もう」 「わるい」  私の顔が赤くなっているのに気づいたのか、頬を両手で包み込む。そんな広瀬課長……いや、隼人さんの表情はとても柔らかくて嬉しそうだった。 「仕事、手伝うよ」 「でも、悪いし……」 「いや。早く終わらせて、飯でも食いに行こう」 「はい」  資料を取ってもらって、私たちは倉庫を出る。直前までつないでいた手は、また会社を出た後に繋がれることになる。 ***     
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