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もう一度火をつけて
私も所属している総務課のおじいちゃん課長が、この春定年を迎える。だから、その後任に新しい上司が来るのは前から分かっていた事だった。でも、人事異動の掲示を見た時に驚きのあまりあんぐりと大きく開いた口が、まだ戻らない。
「ねえ、美緒! 見た? 新しい課長!」
「うん、見たけど……」
「ね、やばいよね! あの広瀬さんが上司になるなんて……さっきから心臓ドキドキ言ってやばいんだけど」
隣の席に座る亜希子がさっきからうるさいくらいにはしゃぐ。亜希子だけではなくて、このフロアにいる女子社員全員が浮足立っているのが手に取るように分かった。総務課の新しい課長は、営業部のエースで出世頭ともいわれる広瀬隼人。キリッとした顔立ちにモデルみたいな体つき、コミュ力抜群で営業成績はずっと一番の稼ぎ頭、そのため女子社員にモテモテ。弱冠32歳にして管理職にのぼりつめた彼は……私の元カレでもある。数年前に一度付き合ったけれど、半年前に別れた。
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