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雪だ。雪が降ると冬が来た、という感じがする。あちらこちらを埋め尽くすピンク、青、黄色、緑…と挙げていったらきりがないほどカラフルな雪。 だが、様々な色がある中でどこをどれだけ探しても白だけは無い。 白い雪は珍しく、貴重だ。どこにでもある訳でもないし、いつも決まった場所にある訳でもない。 私が小さい頃に一度、少しだけ、ほんの少しだけ白い雪が降った。 私は初めて見る白い雪に感動しつつももっと降れば良いのにな、とも思っていた。 どうせなら死ぬまでに一度でいいから一面白い雪で埋め尽くされた景色──銀世界を見てみたい。そう思って私は白い雪が降ったという情報を受けては現地に行くという日々を過ごしていた。 …だが、何回行こうとも銀世界は見る事が出来なかった。 そんな生活を始めて早五年。最近白い雪が降る頻度と量が増えてきている。 去年までは白い雪が降ったのは世界中で年に一、二回のみ。しかし今年はまだ三月なのにもう二回は降った。 白い雪がよく降るようになったのは寒くなってからだ。 今まではどこの地域でもどんなに寒くてもマイナスまでは下がらなかったのに白い雪がよく降るようになった頃くらいは数百年ぶりにマイナスまで下がった。 私は銀世界を見るのも夢じゃないと思った。 それから私は銀世界を見るために全てを費やし十五年が経った。 ここ数ヶ月は氷河期が来ると言うニュースで全てのチャンネルが埋め尽くされている。 世界中の人々は氷河期が来るのを悲嘆しているが私はこの状況が嬉しくて嬉しくて堪らない。叫び出したいくらいに。 そう、氷河期になれば銀世界が見られるのかもしれないのだ。 例え死んでしまっても白い雪の中で死ねるなら本望だ。避難警告が出ても絶対に避難はしない。銀世界を見るまでは。 その二週間後、突如として氷河期は訪れた。 人々は地下や外の見えない防寒設備に避難し、外には私一人だけが残った。 雪が降り始めた。今のところ白以外は見つからない。これが積もれば銀世界になるのだ。 そう思うと寒さも吹き飛ぶくらいわくわくした。 私は寒さでどんどん身体が動かなくなっていく中で銀世界を見た。 とても美しかった。言葉に言い表せない程に。どこを見ても白い雪しかない。 本当の雪の姿を見た気がした。 とうとう体が寒さで動かなくなって雪に倒れ込み、私は白い雪の中に溶け込んでいった。
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