第13章

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「……何で……」 少しでも物音がしたら聞こえなくなってしまう程の声。 「何でそんなに俺に関わろうとするんだ?」 今度はしっかりとした声だった。 彼は言葉を続ける。 「理解できない。普通は関わろうとしねぇだろ」 彼にしては落ち着いた声だ。 ここまで落ち着いて話すのは、もしかしたら初めてかもしれない。 リオンは彼の問いかけに少し思考を巡らせるも、すぐに口を開けた。 「そうかな」 彼女はユイランへ一歩足を近付けた。 彼を取り巻く空気が緊迫したものに変わる。 「私は、それはユイランの方だと思うよ」 また一歩、近付く。 「ユイランの方が、人と関わるのを避けてるみたい」 そしてまた一歩――。 「……っ!」 リオンはユイランの手を強く握った。 引こうとする彼の手をしっかりと掴み、黒の瞳を見据えた。 「どうして?」 「な……っ」 「どうして逃げるの?」 何だかんだと言って彼は人を寄せ付けない。 部屋に閉じ込められているのも理由の一つだろう。 けれど……。 「何がそんなに恐いの?」 バシン! リオンの頬に、電気が走ったような痛みを感じた。 しかし彼に、前のような殺気はない。 「いた……」 「てめぇいい加減にしろよ……」 固く拳を握りしめたユイランは、床に倒れたリオンを見下ろす。 腰かけていたベッドから立ち上がり、彼女の髪を乱暴に掴んだ。 「俺は黒の妖精だぞ! この髪と瞳が、周囲の人間に被害を及ぼすんだよ」 この部屋に閉じ込められたのも、首に三角の刻印を押されたのも、それを封じるため。 だがリオンは首を横に振った。
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