第13章

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「……それでも……」 彼から発せられる声。 さっきとは違う雰囲気。 彼女は息を飲んでユイランの出方を待った。 「それでも俺は……」 心の内から絞り出すように、彼は言葉を紡ぐ。 それにゆっくりと応えるように、リオンは相槌を打った。 祈るように、そして励ますように彼の手をぎゅっと握る。 お互いの体温が感じられる。 「俺は、出たい……。ここから、この城から……!」 「ユイラン……」 彼からしてみれば、それは願っても決して叶うことのない夢のような話だった。 城の外に出るなんてことは、本来なら一生許されない。 「うん……うん! 出よう、一緒に!」 リオンはこの時初めて、ユイランの前で心から笑うことができた。 「大丈夫だからね、ユイラン! 私に任せて!」 彼女は手にぎゅっと力をこめると彼から手を離し、すぐに部屋を出ていった。 その様子はまるで、嵐のように。 (あの女……) ユイランは呆然とする他なかった。 時間が経つにつれ、浮足だつリオン。 何か作業をしては時計を見、また何かしては時計を見ることを繰り返していた。 (落ち着かない……) ちらりとまた時計に目を移す。 今の時刻は一五時半。 火薬遊びは一九時から始まる。 彼女が計画している目的の場所には三〇分前、つまり一八時半に城を出るつもりだ。 (まだ時間がある) 何か仕事を探しに行こうかと考えているとき、部屋の扉をノックする音が聞こえた。 丁寧なリズムからしてソルトではない。 ユーフェンかリルあたりだろう。 「はい」 リオンの返事を確認してから開く扉。 綺麗で繊細な金の髪、優しく大きなブルーの瞳――ユーフェンだった。
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